幼い私の喜びと戸惑い

母がお迎えに来るまで、私は保育園で先生と過ごす時間が好きだった。

みんなが帰って静かになった園の中、膝の上にちょこんと座らせてもらって、「お母さん、まだ来ないねぇ」なんて声をかけられると、なんだか世界に自分しかいないみたいな、特別な気持ちになれた。

あたたかくて、優しくて、嬉しくて。

その時間が少しでも長く続けばいいなと、密かに思ったこともある。

だけど、少しずつ空気が変わっていった。

お母さんが遅れていることを気にしている先生のまなざし。申し訳なさそうに頭を下げる母の姿。その光景を見た瞬間、胸の奥がきゅうっと締めつけられた。

自分が迷惑をかけているのかもしれない、そんな思いが、小さな心に初めて影を落とした。

あのときの私は、ただ、先生と特別な時間を楽しんでいただけなのに。

ふと、どこかで「何かが違ったのかな」と感じた。

それでも。

あの日感じたあたたかさも、胸にひそんだ小さな戸惑いも、どちらも私の一部になって、今につながっている。

幼い日の揺れる心が、今の私の中で、そっと優しく息をしている。

今日のイラスト 膝の上のしあわせ

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