小銭をドブに捨てた日

あの日も、いつものようにひとりで歩いて、ひとりで遊んでいて、手の中には小銭がいくつかあった。

どこで手に入れたかは覚えていないけど、それは 盗んだものじゃない とだけははっきり記憶してる。

何せ、あの一万円事件のあとだったから。。

私はそれからというもの、何を持っていても、誰かに見られるたびに「疑われるかもしれない」と思うようになっていた。

まるで、何もしていなくても、何か やってしまった顔 をしているような、そんな気がしてた。

その日、私はガチャガチャをしに行った。
ズボンのポケットの中で、小銭がカチャカチャと音を立ててた。

機械の前に立ち、コインを入れ、ぐるりとレバーを回すと、カプセルがカラコロンと落ちてくる音が好きで興奮して、一瞬だけどうれしい気持ちになった。

でも、そのあと
あれ?
また小銭が増えた。となった。

実際には、百円で買って、お釣りに十円玉が戻ってきただけのことなんだ。けど、そのときの私には、持ちすぎてる ように思えて戸惑った。

そして、向こうから大人の人が歩いてくるのが見えた時、とっさに心が凍った。

「また叱られるかもしれない」

「お金なんて、こんなに持ってちゃいけないんだ」

十円玉ばかりの小銭が、手のひらでやけに冷たく感じた。

ズボンのポケットの重みが急に 罪 みたいに思えちゃったから
私は、急いで道の脇のドブへ・・・

あの、アスファルトの隙間に空いた穴の中へ、
ジャラジャラと小銭を落とした。

拾えるような場所じゃなかった。
でも、拾うつもりもなかった。
そう、隠したんだと思う。

叱られるかもしれない 証拠 を、誰にも見られないようにした。

お金を捨てたというより、「私は悪くない」って言いたいのに、言えなかった自分を、そっとドブに落とした。

あの時の私は、あの10円玉の山を、自分の罪 みたいに感じていたんだよ。。なんか、切ない。。。

今日のイラスト  ガチャガチャ

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